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ビジネスに活かす「Yes, And」:小泉進次郎議員の記者会見から学ぶコミュニケーション術


小泉進次郎議員は、東京都内で開催された記者会見において、自民党総裁選への立候補を正式に表明しました。この会見で、小泉議員はフリーランス記者の田中氏からの辛辣な質問に直面しましたが、その対応は多くの注目を集めました。

本人が意図的だったかは定かではありませんが、使用されたのは「Yes, And(イエス・アンド)」というコミュニケーション技法でした。

インプロ(即興コメディ・演劇)のゴールデンルール「Yes, And」

「Yes, And(イエス・アンド)」はインプロ(即興コメディ・演劇)やコミュニケーションで使われる基本テクニックで、相手の発言を受け入れ「Yes」、さらに自分の意見を追加「And」して会話を深めます。これにより建設的な対話と創造的な協力が可能になります。

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小泉議員はこの技法を駆使し、質問を否定するのではなく、対話を発展させる方向へと導きました。

辛辣な質問の内容

フリーランス記者の田中氏から、小泉議員に対して辛辣な質問が投げかけられました。

この先首相になってG7に出席されたら突出…『知的レベルの低さ』で恥をかくのではないかと、皆さん心配しております…それこそ日本の国力の低下になりませんでしょうか。それでもあなたはあえて、総理を目指されますか?

引用: Yahooニュース 「辣質問…小泉進次郎議員の『さわやかな切り返し』に注目集まる …」 (2024年9月6日)

この質問に対して、小泉議員の対応が注目を集めました。

小泉進次郎議員の対応

小泉議員は落ち着いて、以下のように答えました:

Yes, And の「Yes(肯定)」の部分

私に足らないところが多くあるのは事実だと思います。そして完璧ではないことも事実です…

引用: Yahooニュース 「辣質問…小泉進次郎議員の『さわやかな切り返し』に注目集まる …」 (2024年9月6日)

Yes, And の「And(提案)」の部分

…しかしその足りないところを補ってくれるチーム、最高のチームを作ります。そのうえで今まで培ってきたものを1人1人と各国のリーダーと向き合う覚悟、そういったものは私はあると思っています

引用: Yahooニュース 「辣質問…小泉進次郎議員の『さわやかな切り返し』に注目集まる …」 (2024年9月6日)

さらに、小泉議員は田中氏に対し、

田中さんにこのようなご指摘を受けたことを肝に銘じて、これから『あいつ、マシになったな』と思っていただけるようにしたいと思います

引用: Yahooニュース 「辣質問…小泉進次郎議員の『さわやかな切り返し』に注目集まる …」 (2024年9月6日)

と語りました。

Yes, And を使った解説

この会話は、インプロの “Yes, And” 技術の優れた応用例として説明できます。

  1. Yes(肯定)の部分: 小泉議員の「私に足りないところがあるのは事実。完璧ではないのも事実です…」という回答は、”Yes, And” 技術の「Yes」の部分を示しています。批判的な質問に対して、その内容を否定せずに受け入れています。これは相手の意見を尊重し、対話の基盤を作る重要な要素です。
  1. And(提案)の部分: 続く「しかし、その足りないところを補ってくれる、最高のチームを作ります。」という発言は、”Yes, And” の「And」の部分を表しています。批判を受け入れた上で、それを乗り越えるための具体的な提案や解決策を提示しています。これにより、会話を前向きな方向に進めています。
  1. 発展的な対応: 「今まで培ってきたものを、一人一人と、各国のリーダーと向き合う覚悟はあると思っています」という部分は、さらに “Yes, And” を発展させ、自身の強みや決意を示しています。これは、批判を受け入れつつも、自身の価値を主張する巧みな応用です。
  1. 継続的な改善の約束: 最後の「『あいつ、マシになったな』と思っていただけるようにしたい」という発言は、”Yes, And” の精神を未来に向けて継続する姿勢を示しています。これは、相手の意見を尊重しつつ、自己改善への意欲を表明する効果的な使用例です。

このように、小泉議員の対応は、批判的な質問に対して否定的や防御的にならず、むしろそれを肯定的に受け止め(Yes)、そこから新たな提案や解決策を提示する(And)という “Yes, And” 技術の本質を巧みに応用しています。これにより、対立的な状況を協調的な対話へと転換しています。

小泉議員は田中氏の視点を受け入れつつ、自らの意見を加えることで、建設的な議論を生み出しました。そして自身の考えや取り組みについてのビジョンを語り、前向きな対話を成功させました。

もうひとつのインプロの技術:「ストーリーテリング」

さらに「田中さんのおかげで思い出した」と、環境相時代にも同じような質問を受けたエピソードを披露。「そのベテランの記者さんとは、退任の時に花束を頂く関係になりました。田中さんとはそうなれればうれしいです」と笑顔を向け、記者も「分かりました!勉強してくださいよ」とその姿勢を認めていた。

引用: Yahooニュース 「辣質問…小泉進次郎議員の『さわやかな切り返し』に注目集まる …」 (2024年9月6日)

この部分は、インプロのストーリーテリング技術の応用例として説明できます。

  1. 即興的な対応: 文中の「田中氏のおかげで思い出した」という発言は、その場で過去の経験を思い出し、即興的に話に組み込んでいます。これはインプロの重要な要素である「今、ここ」の原則を示しています。
  1. 過去の経験の活用: 環境相時代のエピソードを引用することで、聞き手との共通点を見出し、関係性を構築しています。これは「Yes, And」の原則を応用し、会話を発展させる技術です。
  1. ポジティブな展開: 「花束を頂く関係になりました」という部分は、ポジティブな結末を示しています。これはインプロの「ハッピーエンディング」の原則を反映しています。
  1. 相手への共感: 「田中氏とはそうなれればうれしいです」という言葉は、相手への理解と共感を示しています。これはインプロの「キャラクターの受け入れ」の原則を応用しています。
  1. オープンエンド: 記者の反応「分かりました!勉強してくださいよ」で終わることで、今後の関係性の発展を示唆しています。これはインプロの「オープンエンド」の技術を使っています。

このように、この短いやり取りの中に、インプロのさまざまな技術が巧みに応用されていることがわかります。

SNSでの反応

このやり取りはSNSでも大きな話題となり好意的なコメントが寄せられました。

X(旧ツイッター)では「知的レベルの低さ」「知的レベル」や、質問したフリーランスの名前などがトレンド入り。「『知的レベルの低さで恥をかくのでは?』という失礼な質問を笑顔で聞き流すだけでなく、しれっと名前を聞き直してメディアに質問者の名前を流す小泉進次郎氏、さすがだな」「進次郎vs田中 知的レベルが低ければこのような返しはできないでしょうよ そういう意味では進次郎の株を上げた会見でした」「結果的にこのフリーランス記者の知的レベルの低さが露出しているわけですが、翻って政治家・小泉進次郎の受け答えが実に良い。どうでも良い質問でもむげにせずに、ちゃんとアピールの時間に転換している」などと書き込まれていた。

引用:日刊スポーツ「小泉進次郎氏の「知的レベルの低さ」冷静切り返し、SNSが絶賛…」(2024年9月6日)

まとめ

会場の雰囲気は和らぎ、議論はより深く、意味のあるものへと発展しました。この一連の流れは、小泉議員のポジティブなコミュニケーションの姿勢を示し、聴衆にとっても非常に印象的な瞬間となりました。彼の対応は、政治における対話の重要性を再認識させ、多くの人にインスピレーションを与えました。

小泉進次郎議員は、厳しい質問に対して「Yes, And」で自身の弱点を認めつつも、克服するためのビジョンと経験を交えて回答し、結果的に自身の評価を高めることに成功しました。このコミュニケーション技法は職場などのビジネスシーンでも大いに活かすことができるのではないでしょうか?

「Yes, And」は生まれ持った才能だけではありません。インプロを応用したトレーニングでどなたでも習得可能なコミュニケーション技術であり、マインドセットです。

「Yes, And」のトレーニングや研修にご興味お有りの方は気軽にお問い合わせください。

本記事には特定の政治家や政治団体を応援する意図は一切ございません。この記事は純粋に情報提供を目的としており、政治的な立場を表明するものではありませんので、予めご了承ください。

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