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JR福知山線脱線事故から考える失敗の取り扱いと心理的安全性

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JR西日本の福知山線脱線事故から2020年4月25日で15年が経ちました。

安心安全だと誰もが疑わない通勤電車で、旅客機が墜落したかのような悲惨な事故が発生しました。事故でお亡くなりになられた方には心よりご冥福をお祈り申し上げます。また、事故に遭われた方、そしてそのご家族や関係者の皆さまには、心よりお見舞いを申し上げます。

新型コロナウイルスの影響で、事故を風化させないための追悼の行事や講演会が中止になっているとお聞きし、微力ながら事故の間接的要因を心理的安全性の観点から考えてみたいと思います。

福知山線脱線事故の要因は何だったのか?

2005年4月25日にJR西日本の福知山線で発生した列車脱線事故で乗客、運転士合わせて107名が死亡、562名が負傷しました。

事故調査委員会は、

「ブレーキをかける操作の遅れにより列車が脱線した」

という典型的な単純転覆脱線と結論づけました。

失敗に対する懲罰は失敗を防ぐか

典型的なミスによる脱線事故… これでは、納得できるものではありません。それでは、主な事故の間接的要因を見てみましょう。

  • 設備の不備: 自動停止装置設備がなかった
  • 余裕のないダイヤ:他社との競争を過剰に意識し過密なダイヤを組んでいた
  • 日勤教育・・・再教育ではなく、懲罰的な就業規則や経営理念の書き写しなどを1日中させていた
  • 乗務員の問題:経験10ヶ月で以前にも失敗を繰り返し、当日も同じ状態だった(事故直前も失敗を報告しないよう執拗に車掌と会話しようとしていた)

などがあると言われています。

ここでは、特に「失敗の取り扱い」に着目してみたいと思います。

事故当時も話題になりましたが、JR西日本ではオーバーランなど運転士の失敗に対し、1日中就業規則や経営理念の書き写しなどを懲罰的にさせていました。その日勤教育と呼ばれる懲罰的な失敗への対応により、運転士は失敗を極度に恐れるマインドになっていたことは想像できます。

また、経験10ヶ月の運転士は以前にも失敗を繰り返し、当日も失敗をし、その失敗を車掌に報告しないように執拗に会話しようとしていました。このことから、失敗の恐怖から、それをオープンにするのではなく、どうにか無かったことにしようとしていたこともわかります。

まとめると、当日の運転士は、

余裕のないダイヤからのプレッシャー → 日勤教育による失敗への恐怖 → 当日の度重なる失敗

のスパイラルにより、パニックに近い状態に陥ってしまったのでは?と想像できます。

失敗をどう扱えば良いのか

日本即興コメディ協会のチームのための心理的安全性研修では必ず、失敗のグループワークを実施します。失敗を誘発するエクササイズを実施し、失敗をオープンにし、その受け止め方を考え、訓練します。その観点から、福知山線の事故では、その現場に心理的安全性が欠如していたのではないかと考えます。

心理的安全性を誤解されている方は「そんなぬるま湯のような考えでは事故は防げない」とおっしゃられるかもしれません。しかし、そうではありません。心理的安全性研究の第一人者であるハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授の研究が失敗の取り扱いと心理的安全性の関係に示唆を与えてくれます。

彼女は著書(『チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ』)の中で病院での投薬に関するチームワークについての研究を紹介しています。チームワークが投薬の失敗にどう影響するかを調べたもので、エドモンドソン教授の仮説は、(多くの方も同じように考えるだろうと思われる)、「チームワークが良いほど、投薬ミスは少ない」という正の相関が得られる、と言うものでした。

しかし、調査結果は予想に反して、「チームワークが良いほど、失敗が多くなる」というものでした。言い換えると、心理的安全性が高いほど失敗が増えた、ということになります。

心理的安全性が高いと失敗が増える ?!

ここで改めてエドモンドソン教授の心理的安全性の定義をご紹介します。

「チームの心理的安全性とは、チームの中でリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念」

出典: チームが機能するとはどういうことか――「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ, 2014,  エイミー・C・エドモンドソン

心理的安全性の高いチームでは、失敗した人は素直に失敗を認め、チームメンバーがそれをフォローします。つまり、失敗が多かったチームは、失敗をオープンにし、シェアし、フォローするため、実際の失敗の数が多くなる、というよりもどんな小さな失敗でもオープンにできる環境のため失敗の表出が多くなった、ということです。

エドモンドソン教授を含め、我々は、決してルーティンによる失敗が多く発生すれば良い、とは考えてはいません。とはいえ、エドモンドソン教授の研究、そして福知山線脱線事故の関節的要因からも失敗の取り扱いをどのようにすれば良かったかは明白なのではないでしょうか。

緊急時に力を発揮するチームの心理的安全性

新型コロナウイルス禍では、医療関係者を含め極限状態、慣れない現場で応援されている、また、テレワークで孤独に作業されている方もいらっしゃいます。このような緊急時にこそチームの心理的安全性の有無が問われます。失敗は必ず発生します。緊急時には懲罰などやっている暇はありませんし、小さな失敗をオープンにできないことが後に取り返しのつかない大きな失敗に変わります。失敗が起きたときにそのことをオープンにし、シェアし、お互いにフォローする、そんなチームの心理的安全性を普段から築いていきたいものです。

最後に、事故後、JR西日本では懲罰的な日勤教育を改め、ミスを正確に把握し、根本的な安全対策を講じる方針に切り替えたそうです。

皆さんの職場には心理的安全性はありますか?


日本即興コメディ協会協会では、新型コロナウイルス禍でもオンラインでチームの心理的安全性を醸成する「オンライン会議のためのチームの心理的安全性研修」を提供しています。気軽にお問い合わせください。

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